chatGPTで小説を書いたらバレるのか?
結論を述べる前に、chatGPTで生成した小説のあらすじと人間が書いた小説のあらすじを見比べてみよう。みなさんは、あらすじ1と2で、どちらがAIっぽいと感じただろうか。
あらすじ1
三十九歳の商社マン・横田光弘は父・寛也が遺した手紙を読んで、すぐさま会社を飛び出した。同じ頃、光弘が住んでいる分譲マンション「パーク朝凪」は炎に包まれていた。人だかりの中からは「まだ中に人がいるぞ」「管理室の書類を先に出せ」という怒号が上がり、黒煙の向こうでは理事長の姿だけが見えない。父の手紙には、たった一行、「十二年前に私が消した一文を探してほしい」と記されていた。
築四十年、二度目の大規模修繕を目前にした朝凪では、工事費高騰と積立金不足をめぐって住民同士の亀裂が深まっていた。追加徴収に怯える高齢者、資産価値しか見ない区分所有者、議決権を持たない賃借人。火災をきっかけに、父の遺した部屋と議決権を相続した光弘は、半ば強引に修繕委員会へ引きずり込まれる。そこで彼は、かつて委員長を務めた父が、前回工事で起きた下請け作業員の転落死と、防火設備の手抜きを示す議事録の一文を握りつぶしていた事実を知る。さらに今回の出火も、その証拠が眠る管理室を狙った放火の疑いが濃かった。
会社では利益だけを追い、共同体を煩わしいものとしか見てこなかった光弘は、住民たちの老い、貧しさ、見栄、孤独に触れるうち、「一戸一票」という公平の仕組みが、実は弱い者の声を切り捨てる装置でもあると知っていく。父はなぜ黙ったのか。誰が火を放ったのか。真実を明かせばマンションの資産価値は暴落し、住民の暮らしは壊れる。それでも総会の日、光弘は父が消した一文と、記録から消された死者の名を読み上げる決意をする。これは、一つの火事を入口に、老いたマンションという小さな社会に堆積した罪と沈黙を暴き、相続したのが部屋ではなく「共同体の加害」であったと知る男の物語である。
あらすじ2
母の孤独死をきっかけに、三十九歳の元校正者・市村澄子は、郊外の築四十年の分譲マンション「パーク朝凪」の七〇三号室へ戻る。遺されたのは部屋だけでなく、一戸一票の議決権と、住民であることの責任だった。文章が書けるというだけの理由で、大規模修繕委員会の書記に選ばれた澄子は、外壁補修や漏水対策、積立金不足をめぐる会議に出席するうち、修繕とは建物を直す作業ではなく、住民たちが互いの老い、貧しさ、孤立に値段をつける行為だと知っていく。追加徴収に怯える高齢者、資産価値しか見ない区分所有者、声を上げても議決権を持たない賃借人。足場が組まれ、建物全体が白いメッシュに包まれると、各戸が隠してきた生活の傷が輪郭を帯び始める。
そんな折、澄子は母の遺品の中から、十二年前の大規模修繕の未製本議事録を見つける。正式版からは削除された一文 -「安全帯増設費用は高額につき、今回は見送る」。直後、郵便受けに匿名の紙片が投げ込まれる。「このマンションは、一人を見殺しにして白く塗られた」。かつて工事中に下請け作業員が転落死し、管理組合は費用を優先して安全対策の削減を黙認していたのだった。さらに、毎朝共用廊下を黙々と掃除する清掃員の女が、その死んだ作業員の妻でありながら、このマンションの賃借人として、未来を決める会議から排除されていることを知る。
理事長は今回もまた異様に安い業者を推し、住民たちは生活防衛と責任追及のあいだで引き裂かれていく。総会当日、白い養生幕に包まれた建物の内側で、澄子は母が消した一文と、記録から外された死者の名を読み上げる。修繕の可決か否決かではなく、誰の痛みを共用部分として引き受けるのかが、ついに問われる。壁は塗り直せても、黙認の歴史は塗り込められない。これは、老いたマンションの修繕を通して、所有と沈黙の共同体が抱える小さく決定的な罪を暴く物語である。
おそらく、ほとんどの人が区別がつかなったのではないだろうか。今回はプロが書いた小説と比較したわけではない。その意味では、細部の神を構成する素人と玄人の間を分ける「妙」がないのかもしれない。それこそが小説の核心というなら、まだ検証の余地は残されている。
ただ、一般人が書くレベルなら最早、chatGPTで小説を書いてもバレることはない。これが答えだと思う。素人レベルという条件付きではあるが、「物語を作る力」は人間特有の技術ではなくなったと言わざるを得ないだろう。
chatGPTで書いた小説をあたかも自分が書いたように嘯く人も出てくるし、その真偽の判定を置き去りにして、人々に親しまれるコンテンツも量産される。そんな時代になった気がする。
技術的にバレる可能性はある?
なお、生成AIで作られたものには、「AIで生成されたコンテンツであること」を示すIDが存在すると聞いたことがある人もいるだろう。chatGPTが生成した小説にもIDが付与されているならば、判定技術によってバレる可能性はある。実際、どうなのだろう?
どうやらchatGPTで生成された文書には、AIが書いたことを示すIDは付与されていないようだ。これに関しては、OPEN AIが過去に発表した資料によれば、
- 当社チームはテキスト透かし技術を開発しており、代替案を検討する際にも引き続きこの技術を検討しています。
- このシステムは、言い換えなどの局所的な改ざんに対しては非常に正確で効果的ですが、翻訳システムの使用、別の生成モデルによる言い換え、モデルにすべての単語の間に特殊文字を挿入させてからその文字を削除するなどのグローバルな改ざんに対しては耐性が低く、悪意のある者による回避が容易です。
- 私たちが検討しているもう一つの重要なリスクは、テキスト透かし技術が特定のグループに不均衡な影響を与える可能性があることを示唆する調査結果です。例えば、英語を母国語としない人々にとって、AIを便利なライティングツールとして利用することに偏見が生じる可能性があります。
- 私たちのチームは、メタデータをテキストの出所証明手段としてどのように活用できるかについても研究しています。
- まだ調査の初期段階にあるため、このアプローチがどれほど効果的かを判断するには時期尚早ですが、メタデータにはこのアプローチを特に有望にする特性がいくつかあります。
- 例えば、透かしとは異なり、メタデータは暗号署名されているため、誤検出が発生しません。生成されるテキストの量が増加するにつれて、この点はますます重要になると予想されます。テキスト透かしは誤検出率が低いものの、大量のテキストに適用すると、誤検出の総数が大幅に増加します。
※2026年4月現在、このトピックに関する最新情報を探したが確認できていない。
すでに技術として存在するが、「ちょっとした改変」や「生成AIの複数使用」といった抜け道がある以上、AIが生成したという評価を安易に与えるのは判定技術を提供する側としては大きなリスクである。万が一、個人の信用に大きな不利益をもたらした場合、被害者から訴訟を起こされる危険性もあるかもしれない。
2026年4月現在、導入状況はわからないが、少なくともテキスト生成に関してIDを付与したことを説明する資料はないため、現在も検討中なのだろう。
また、chatGPTが提供している「AI分析チェッカー」を使用したときに、「あらすじ2」を評価すると、以下のような結果となった。

この結果をみると、AIですらAIが執筆した小説であることを100%見抜けないことがわかる。chatGPTで生成した小説のあらすじなのに、「AI単独で執筆された可能性が22%」というのは、それを何よりも物語っている。
いずれにしても、現在の判定技術には限界があると言えるだろう。
生成AIが物語の民主化をもたらすかもしれない
しかしながら、AIに小説を書く能力があるからといって、人間が小説を書けなくなるわけではない。むしろ、頭の中でふと浮かんだ面白い話や信じられない経験談を小説にできるようになったのだから、「物語の民主化が起きた」とも言える。
そして、こうした状況の中にあるからこそ、「プロが書いた物語はやっぱりすごい」という「小説家」へのリスペクトがより強固なものとして高まるかもしれない。AIに能力があるとはいえ、そこには微妙なグラデーションがあり、代替できない人間の活動領域もちゃんと存在するはずだ。
これからは、どの領域においても「AIでも出来るけど、これはあなたがやったほうが面白い」という「AI or 人間」という二項対立から離れた視点も大切になると思う。
点から線へ、線から面へ。時間的制約でやるしかなかった「作業」の幅が広がって、そこに人間を介する意味を為した「活動」の広がりが生まれた時、生成AIは仕事を奪う存在から仕事を楽しめるようになる道具として、私たちの可能性を広げてくれるのではなかろうか。